素手/藤鈴呼
止まる
吸盤に 吸いつく瞬間のように
彼等が 集まり始めたからだ
ダッシュボードの上で 影が動く
右下がりなんだから
左側に 移動する訳はないのに
窓に残る 雨粒とは
反対方向に 動く
そういうことならば
話は 早いのですが
何度も通り過ぎた シグナルの色が
とうに 分からなくなるくらいの 暗闇
普通ならば その方が
クッキリ ハッキリ する筈なのに
いつもの あなたの 相槌みたいに
ゆるやかな ペースで
苛立ちを 加速させる
スライムみたいな
色の
ちょっと 腐りかけている
かつては
シャキッとしていた葉を
かき集めるのに
素手で 充分だ
ゴム手袋なんて
今は 必要ないよ
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