ノート(齋)/木立 悟
何が起きても
見てみぬふりをする土地に
しっぺ返しが 訪れる気がする
何も無く
誰も知らない器の内に
ひとつの鈴が 降りる気がする
手のひらの傷に
まとわりつく手
居ても居なくても 居る気がする
冬鳥のために
ひとつだけ残された実の内に
ひとつの言葉が まばたきをしている
春に伐られた樹
秋に伐られた樹
根さえ取り除かれたのに
雪を着てそこに立っている
夜はいつも含みすぎる
夜はいつも咬みすぎる
砂銀の渦を 目で追いすぎる
あなたは冬ではありません
そう言われ立ち尽くす冬のそばを
冬の次の次の季節が
偽りの雪を着てすぎてゆく
つららが隣のつららを見つめ
触れようとして落ちてゆく
腕をひろげたつららの群れが
墓標のように立ち並ぶ
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