島の空に浮かんでいた薄白い月/星丘涙
ただ、ただ淋しい島の夜に
波の音が煩く怒鳴っていた
雲は早い風に流され
様々な模様を作り
それを月光がやたら怪しく浮かび上がらせている
潮風で軋む扉の窓に潮がへばりつき
裸電球の下では爺ちゃんが島焼酎をグビグビ飲みながら
テレビで相撲を観ていた
幼い私はただ風の音が恐ろしく
島の淋しさの中で呆然としていた
爺ちゃんの身体は痩せているが腹だけ風船のように膨らんでいた
私はそれをいつも不思議に思っていたが口には出さなかった
今思えば島焼酎の飲みすぎであったのだろう
爺ちゃんは、あの晩も酒に酔って機嫌がよさそうだった
酔うと私に「俺はお前が結婚するまで生きられるか
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