小さなやつらの大きな終わり/ホロウ・シカエルボク
ってたからわざわざ話に寄ってくれたんだ―「いい歳した男がさ、ガキみたいにわんわん泣きながら、ぬいぐるみを殴るみたいに刺し続けてたってよ」俺は黙ったまま肩をすくめた、なにか飲むかと聞くと、勤務中だ、と警官は言って…「だけどビール一杯くらいならいいかな」と思い直した、俺はビールを入れて差し出した、警官は帽子を脱いでスツールに腰をかけた、あ、と俺はあることを思い出して、聞いてみた、「その男、前科あった?」警官はちょっとだけ笑って、殺しの話か、と呟いた、「取調室でも言ってたんで結構時間裂いて調べたよ―だけど、あいつが行ってた日付には死人どころか腹を壊したやつの記録すら、なかったな」「だろうな」「ムキになって嘘をつくと、引っ込めなくなるもんだ…そのうち、それが本当のことだとだんだん錯覚してきちまうんだな、そんな人間、うんざりするほど見てきたよ」カウンターに金を置いて警官は出て行った、下らない小競り合いなんだよな、と、俺は彼のグラスを片付けながら考えた
たまたま、おおごとになっちゃった―っていうだけの話だ。
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