無駄な境界線を引きたがるインサイドとアウトサイド/ホロウ・シカエルボク
小さな金属の塊がふたついびつなフロアーを転がってぶつかった時のような音が脳髄のどこか奥深いところで何度か聞こえた、その感触は絶対に忘れてはいけないなにかをしまいこんだ鍵付きの抽斗の鍵が壊れてしまってしばらく経ったあとでそれに関するなにもかもすべてがおぼろげになってしまったと気づいた瞬間の心許なさに似ていた、窓から見える二月最初の週末は薄雲に阻まれた煮え切らない太陽に彩られていて、その色味は街路に溢れている連中の表情がまるで酷い喪失のあとのように見えるなにかを含んでいた、そんな景色を見ていると愉快なピエロの映像にホラー映画のサウンドトラックを合わせると途端に恐ろしくなる、という一昔前の流行を
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