金平糖/藤鈴呼
 
 あるみたい

箱を 開けるのが
何時だって 楽しみだった

ひな祭りの 季節には
ぼんぼりが お決まりで

あの ぽおとした 薄明りが
何て いじらしいのだろうと
幼心に 感じていた

手前に置かれた
平行四辺形は
とても 固くて

プラスチック製だから
余り 心を 奪われなかった 筈なのに

今では
箱の中に
あの 色合いを 見つけ出すと
嬉しくなって しまう

いつかの あられと 勘違い
白 桃 黄緑
この 三色だけで
生きて行ける 気がしていたの

だから
こんぺいとうの中に
黄色が 混ざっていた 瞬間は
本当に 狼狽えた

驚いて
口が開いて
止まらなかったけれど

その唇に 沿うように
甘い 金平糖のような 波の花が
転がり込んだから

全て 許されるような
錯覚を 憶えた

今だって 夢の中で
あの 刺々しいけれども
甘い 感触を
憶えているわ

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