殻/うみこ
 
夏の裏には
ドーナツ色の神様が転がっている
つきだす痛みは粒になってこぼれ、
いくつも束ねられた足音が、校舎の隅で鬼火になる
モルタル製の壁の隙間で、
待ち合わせが継続され、
薄青き者と薄赤き者の透明な抜け殻が、
濃ゆい日と陰に区切られてうつむいている

清らかな音が残す下足場の冷やい感覚
幽霊の覚書のような風

地面に張り付いた影が、砂金の輝きに眩んで侵食を起こす午後

抉れた山肌が、剥き出された赤土を濃ゆく引き締めているが
あの肌の緊張が緩むと降りてくる夜

その夜山間の家々に灯る窓の火の向う

たくさんのあなた方が、手を傘にしてこちらをのぞきこんでいるの
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