私のがま口/もっぷ
私のお財布は
命の器だったんですね
使い込んでるがま口なんです
アンティークの布を使った手作り
パチンと開けると確かにみえる
銀のいろやら銅のいろやら いまは 私のコインたち
みんな実は 時間 です
どんなあなたのお財布のなかだってそう
気がついたのは勤務中のことでしたが
沁みたのは
父さんが旅立った 変わらぬ日付の
廻るのは四季 そして
お財布のなかも廻るんだって
悟ったのが 失業してからのやっと あの日
御裾分けで ご馳走になったパン、とても 美味しかった
、野生だったら
静かな凪の海原で
お魚たちはお昼寝できない
たとえばヒトの胃袋とお財布とにまで求められて
ほら みえるよ お魚のたましいが
水平線を超えていく
喧噪の東京で
日日挫けてばかりの私 でも
コインは、がんばってる
応えるように生きています
件のパンの隣人の心と 歓びに気づける心も
このがま口をまだ、まだ、気にしてくれるみたいです
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