闇夜/アンテ
街のはずれで老いた女が営む店は
闇色の菓子がたいそうな評判だったが
だれ一人材料や製法を知らなかった
ある時店が閉まったあとも
客の一人が見張っていると
老いた女は夜更けを待ってふらりと出かけた
あとをつけると
老いた女は街の端までやってきて
暗闇を小さく切り取った
穴からは淡い光が漏れ出したが
縫ってふさぐともとの暗闇にもどった
老いた女が帰ったあと
男はさっそく暗闇を両手で抱えるほど切り取り
家に持ち帰って自慢した
たちまち噂が広がって
夜になると人々は街の端へ押し寄せ
我先にと暗闇を切り取ったので
街はすっかり明るくなった
人々は夜が来ないことに不平を
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