借りてきたテコ / ある女の子篇/末下りょう
借りてきたテコを折らないよう
慎重にあてがって
押してみる
借りてきた猫が笑ってる
分厚い雨雲からくる雨粒が草木ではずんで賑やか
借りてきたテコじゃ動じない本日
濡れた髪が額にはりついて
落ち着きのなさを感じて
からだを左右に揺らして
腰に手を当てる
降りしきる雨粒のなかで波うつ海に
おもいでが溺れかけて
ぶるぶるっとくる
雨音のざわめきに濡れそぼつ
ペンキの剥げたオンボロ小屋の雨漏りが打ち鳴らす
紅茶のティン缶に貯めた朝のおどろかし
ブーツをぬいで底にたまった水を流したらあのひと思い出した
生きてるうちにひとりでおっきななにかをどうにかしようとするか
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