降り積もったばかりの雪に覆われた萱野高原には/金槌海豚
降り積もったばかりの雪に覆われた萱野高原には
裸の岳樺木立 透き通る雑木林
冬季閉鎖された板張りの茶屋の建物
道路沿いを着かず離れず蛇行する山犬の足跡
足跡に平行しながら 私の歩みは心の向く方向へと折れて
雪の野原の広がりへと進んでゆく
雪降る前のその場所に確かにかつてあったはずの
さわやかな高原の空気と自由とを味わう人の賑わい
子供の遊び叫ぶ声
木々の葉や草原のハコベラが風にそよぎ擦れあう音
鳥が縄張りを主張する声や
マツ虫やバッタ達が自分の片割れを求める音
草いきれ 花開く音 散る音
その一切は 思い出せない過去の物語の世界へと追いやられ
いまは時折 忘れたよう
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