よぎる/末下りょう
スツールに置いたスタンドライトの明かりが
薄い紙を透かして
褪せた文字を
一ページさきに触れた指の影に落とす
あてどもなくゆれ 、よぎる
ライオンの夢
ー
眠りが獲物と結ばれるときを契機に 、
新しい動物の血潮が
海を揺りおこす
大粒の水飛沫のなか
うちふるえる尾びれの破壊的な手応えを
逃がさずたもつことに
寄り添うと
落ち着きなく壁際に
たまる光 、
美しい背骨のほかになにも残らなかったとしても
この夜のつめたい踵をそれにあてて
ページをめくる
火にかけたケトルが鳴りだす
風のなか
砂浜におりてくる
金色のライオンたちの夢がよぎる
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