ひとり 器外/木立 悟
粉を追えば裏切られ
塵を追えば打ち捨てられる
わたしが蝶に着くはずもなく
蝶がわたしに添うはずもない
わたしには有り
わたしには無い
表も裏も
透り たなびく
接ぎ足しては落ち
根を隠し 積もる
季節は双つ
到かぬ手
確かではないものばかりが確かで
虚ろのなかに鳴り響いている
鈴を咀嚼する口からは
淡い光が漏れつづけている
森に見え隠れする明るいかたまり
枝の影のひとつひとつが
棘の球となり雪に吹かれ
動くものの無いなかを動いてゆく
白い狐が蝶を見つめる
痛みの波 髪の河
岸辺をたどる足跡の蒼
蝶は見つめる 星の螺旋
ただひとつのものが器の淵に
かろうじて残り うたっている
わたしは其処に居るはずもなく
わたしは降り来る欠片に埋まる
戻る 編 削 Point(4)