ラブチュッチュ/末下りょう
 

ミッションの合間に 、ウォツカで居眠りする
宇宙飛行士の寝息が
聞こえる
冬空の下

震度2弱で
きっと倒壊するアパートメントで
きみのお腹に手をあてると
豊かなかわいい水の流れを感じる
浅い呼吸のリズムが 、
あってくる


小窓のすきま風
すべてのかたわらにいるぼくのかたわらにある
鏡餅の亀裂を
通る
ナイフみたいな
光が 、
きみの睫に隠れる
今にも雪が降りだしそうな、そんな静けさに似た 、
静けさ


ラブチュッチュ のち ぽっかり
ひらく宇宙

光をかくまう瞬きが
ひんやりした部屋の空気に
ちょっと傷をつけて 、
ラブい微睡みに
触れてみたくなるような沈黙を加えてくれる


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