日向黄楊櫛/桜鬼弓女
暁 朝の月
陽に向かう月の弦 黄楊櫛を思う
天の櫛でこの黒髪くしけずり
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥されば、
煌の耀き わたしも得られるでしょうか
秘めようか告げようか惑い惑うわたしの想い
煌と貴方を照らす暁光となれるでしょうか
手箱に眠る母様の形見 わたしの黄楊櫛は
椿油と髪のあぶらになめされて琥珀を包んだようにとろりと光り
見れば 飽くことを知らない
貴方もそう 見ても 見つめても
永の時を そっと 凝っと
みつめ みつめつづけても わたし 貴方に飽きない
それは畏しい程
貴方 わたしの月
いつか月の君と白く浮かぶ黄楊櫛を共に眺むる朝が
――――くる、ことを、希う、ばかり。
(朝月の 日向黄楊櫛 古りぬれど 何しか君が見るに飽かざらむ 万葉集2500)
(暁の 秘むか告げくし古りぬれど 何しか君が見るに飽かざらむ 我流のよみかえ)
戻る 編 削 Point(2)