「港町夕焼け市場」 一〇首 2016.12.21, 27/もっぷ
 
日没を悟(し)る港町の夕市とうその記憶のなかの小母さん


真夜にも止むことのない港町夕焼け市場の冬の日の雪


完璧に息絶えてないお魚のしょっぱいなみだも瓶詰として


暮れてゆく海を背にして小母さんの商う包みのなかのうたかた


小母さんのポチのしっぽになりたくて 小母さん金平糖をください


夕星(ゆうずつ)を砕いた欠片がまぶされた潮(うしお)の詩(うた)のそのまた欠片


冬日暮れ市場の終わりを告げるのはポチのしっぽの向きと夕星


ない港ない夕市と小母さんを冬の茜の砂浜に描く


港町夕焼け市場の永遠を生きる小母さん潮騒小町


港町夕焼け市場にまたいつか来ますと風に托してあした


[グループ]
戻る   Point(4)