夜風に惹かれて/乱太郎
 


瓢箪から駒でなく
駱駝の瘤に乗った一等星
此処は
ソロモンの王冠
もう一度聞く 此処は
十二時の馬車がやって来て
瞼の億で歌い出すもうひとつの物語
此処は
仮面舞踏会の扇
聞こえているのでしょう 此処から
夜風に惹かれて
私は既に夢遊病者

鬼の目にも涙もあろうが
アドバル―ンから落ちる月の石
あれは
噂のさそり座の女
なのだろうか いややっぱりね
二度とない 人生の無人の通り駅で
乗り過ごしてばかりの売れない三流小説
聞いて
三十二回転のレコード盤
決して割れてしまわないように それから
夜風に巻かれて
私はやがて溺れてしまうのだろうね

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