冬茜/もっぷ
明日を見たい
あたり前の単なる明日を見たいな
私は市井に溶け込んで
あたり前に八百屋で大根を買う
ネギを買う ニンジンを買う
肉屋では豚小間を
いまとおんなじ一人分でも
みんな馴染みのお店
「おねえさん、これが今日安いよ」
「奥さん、それがいい」
支払っても残るお財布
一円単位の心配のないお財布
そこへ実家からメールが届く
「今度ついでがあってそっちまで行くけど?」
「寄れる?」「いやがるかと思って」母さんったら
今日を見たい
あたり前の単なる今日を見たいな
私はあこがれの市井のなかにあって
あたり前に今日の風に揉まれて
人並みを生きて 冬の茜にこみあげるものは
ちっとも過剰じゃないなみだ
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