喧騒の渦の中、沈黙の夕景にて/倉科 然
この都会に蔓延する自意識と価値観の虚無が
渋谷の交差点で交わって早すぎる冬の夕景に照らされた
薄明るい信号が点滅して時が動いているのを告げている
大きな街頭モニターには空虚なニュースが流れて
アナウンサーは目を伏せがちに言葉をつないでいた
満たされすぎた時代の中でモノに溺れ窒息しそうになっている私たちは
希望と欲にまみれたモノの海に放り出されている
今や価値観などなんの価値もなく今や道徳観など紙の束に押しつぶされた
そんな時代に生まれた私たちが流れ流れたどり着く希望の国はあるのだろうか
学生服と化粧を身にまとった少女たちがすれ違った。
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