灯台/いぬぐす
頬を撫でる
テトラポットを目でなぞる
潮だまりを目に止める
ふたりの失敗はふたりだけのものだ
女は男と別れても次会う人が空母を作れたとしても
泥船を必死で作ってくれた男のことは忘れないだろう
男は女と別れたので次会う人には空母を作ろうと思っているが
泥船を作らされ続けた思い出はトラウマになるほどだろう
女は自分が男の仕事の支えになれなかったことを後悔した
男は自分がいつまでも泥船しかできないのではと自信喪失した
女よ 忘れるな!
君は船よりも陸にあって紙を調達することに力を入れよ!
男よ 忘れるな!
君は泥船という命を一番張った勝負を挑んだ勇者だと!
女にとって男の勇気ほどの宝はないのだから!
ふたりよ!
胸を張って陸で生きよう!
灯台の明かりは朝日に照らされて薄らいでいった
ふたりは陸で違う道を行った
けれど海には思い出が蜃気楼のように浮かんでいるのだった
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