恋慕/智鶴
 
出していた

華やかさは儚さと紙一重で
貴方が言った夕焼けと同じ色の独り言がとても綺麗
年老いた烏の背中が何色にも染まるのは
漆の櫛の金や銀の箔が剥がれ落ちていくのと同じ
唇の端のくぼみが漠然とした感傷を生み出すのは
おが屑の中で燻り続ける炭の欠片が
何かの拍子にまた燃え上がるのと同じ

鞭が心臓を打つように
無知が真相を包んだ時にだけ
少なくとも私は
それを恋と呼んで焦がれた

秋に死んでいく枯葉を愛でた名曲
林檎は酸と甘さを残して
秋の日みたいに役目を終えた

格子窓から見える木漏れ日が
目で追う活字を愛でて問う
その紙に通す節はただ吊るされて
懐かしさを少しだけ通り過ぎたあたりで抜け落ちた

口が先走って愛を恥じて
臙脂の袴、紅葉と秋の寂寥
紅玉の赤が格子の灯りで捲る本のように輝いて
そして
少なくとも私はそれを
恋と呼んで焦がれた

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