或るポエジー/もっぷ
なぜこんな……
そう鳴いて(とても驚いて)
どこかの彼方に隠れに行った鴉が一羽
鏡過ぎるガラスの前でつい美味いもんみつけて
さてしあわせいっぱいで首を伸ばしたら
真っ黒で歪なこれが自分なのかと
愚かなバカ鴉!
と云って
かなしみがさびしく消えてゆくのを
泣きながら紅いランドセルの少女がみていた
三つ編みと十字架と、リボンの制服の歳になって
ふと かの鴉を思い出した少女は
その日からいなくなった あの日を探しに行くために
だって気になって気になって堪らなくって
行方不明も時効だと、からだ不在のお葬式の時
父さんも母さんも もうすでになみだも枯れていたらしい
と そこへ(そこへ)知らせにもどったポエジーが
どんなにうたっても どんなにソプラノでも
少女には届くわけもなく
なぜなら少女はそこで(樹海で)行き倒れて白白と
その傍らにはちいさく白く あの日の鴉の亡骸の
……このポエジーだけが知っていること(このポエジーの孤独!)
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