かたむいていく夜/小林螢太
 


喪われた自我をとり戻すための触手を伸ばして、
私たちは深く検索をくりかえす
意味は自問のたびに消失し、夢のように忘却する
もう孤独であることはむりなのかもしれない



おやすみ、12時のない時計
間延びしたサイレンの音、記憶をなくしたメモリを内蔵して
私たちは、どこにいくのか
どこへいこうとするのか
希薄な問いはかすかな自壊を含み波紋をひろげる
きっと、少しずつ停滞していく
さようなら、虚しき炎
夜の積もる灰を掬いながら
私たちは、しずかにかたむいていく
 
 

 

 


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