ひとつ まなこ/木立 悟
流木と焦木が
河口に混じり
川辺の火を見つめている
低い 低い月の渦
見えない雑踏にまみれ
等価を与えられる
抱くと同時に抱かれるかたち
水で水を受け取るかたち
何かが激しく落ちる音がし
晴れがはじまり 風がはじまる
飛沫が空に到いては
曇をちぎり海に戻る
複数の音のなかの幾つかが
目の前に現われ 手をさしのべる
天気雨が近い
多くの想いが失われてゆく
打ち寄せる波の外側に
鳥の足跡はつづいてゆく
水平線に立つ銀河
星に迷う羽の声
海が陸になったように
いつか陸は海になる
異なるまなこの群れが
同じ陽 同じ月を見つめている
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