ひとつ まなこ/木立 悟
 




流木と焦木が
河口に混じり
川辺の火を見つめている
低い 低い月の渦


見えない雑踏にまみれ
等価を与えられる
抱くと同時に抱かれるかたち
水で水を受け取るかたち


何かが激しく落ちる音がし
晴れがはじまり 風がはじまる
飛沫が空に到いては
曇をちぎり海に戻る


複数の音のなかの幾つかが
目の前に現われ 手をさしのべる
天気雨が近い
多くの想いが失われてゆく


打ち寄せる波の外側に
鳥の足跡はつづいてゆく
水平線に立つ銀河
星に迷う羽の声


海が陸になったように
いつか陸は海になる
異なるまなこの群れが
同じ陽 同じ月を見つめている

















戻る   Point(5)