石田瑞穂詩集『耳の笹舟』について/葉leaf
いヴァイオリンの響き
落葉 秘境の滝壺
遺失されたトライアングル
古い磁気テープに録音された
蝶の羽ばたき
世界にふたつとない音
ゆえに
世界そのものである音
(「耳鳴り」)
石田の作品には、例えば視覚的イメージなどに詩行が拡散していく運動も見られる。それこそ、あたかもノイズのように、石田の思念は遠くへと飛び散っていったりもする。だが、彼の詩的意識は常に聴覚の核心を巡って言葉を紡いでいるように思われる。
引用部では、そこに挙げられた音が「世界にふたつとない音」とされている。ここに働いている意識もまた、感覚的なものの根源性に向かっているはずである。言
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