雪。桜そして明日。/倉科 然
 
夏が終わる頃
丁度日が沈む頃
自覚と無自覚の流れる天の川が見え始めた頃
あなたの言葉を思い出すが
私の意識は酒に酔っているかのようにどこか混濁していて
ステンドグラスから差し込む輪郭のない光のように
私の無意識に吸い込まれて行く
生きる意味などあなたは問わず自死を否定せず
しかしそれでもって私の背を押した
嘆いて笑ってまた明日がある
そんな日を幾度となく繰り返し土に還るのだと
秋になり冬になり春になった
あなたは姿を消したが私はあなたの言葉を胸に抱き
あなたの死すことを許さなかった社会において毎日を暮らし流している
あなたの言葉は桜になり
あなたの言葉は深緑になり
あなたの言葉は落ち葉になり
天に昇り
雪となった
降り積もる雪を踏みしめるともう交差するはずのない生を感じた
幾度となくこの季節の循環を繰り返し私もまた雪になるのだろうか
今日も明日も無意識に沈んだはずのあなたの言葉を思い出す

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