星を指した日/這 いずる
懐かしい星を誰と指したか
老いた母に訊くと、うんうんと不明瞭に頷いている
分からないまま過ぎていく時間が過去をぼやかしていき
だんだんと星の色が落ちていく
ひとつ星を指した幼さを忘れてか
無邪気さを遠くに置いて走ってきて
高くなった視界で
小さくなった手を見つめる
流れていく日々、速さが流星のようで
星は燃え尽きていく
彗星の周期で記憶がふと立ち寄り
過去を思えば哀しく
手を繋ぎ星を指した日
皺の寄った手の感触を
冷えた手の冷たさを感じながら
母を引いて庭に出
指した星座の名を尋ねた
塗り重ねた記憶
戻る 編 削 Point(4)