霜月の空/小林螢太
すっかり寒くなってきた、土曜の早朝
僕はいつもの様に
四階にあるベランダで煙草を燻らす
景色はいつも通りのようで
いつもとは違うように見えた
特に、空が違う
だから、空が好きだ
一度として同じ表情ではないから
過去、
度重なる世間との摩擦で摩耗した僕は
内的世界に向き合うことが多い
傷を癒やすように
空は身近で好きな外的世界だ
変化の少ない、変化を嫌う僕にとっての
パラレルワールドだ
ただ、人は
一人では生きていけないし
身近な大切なものを守りながら
生きていく
そして、
疎遠になった人たちのことも想う
だから、空につぶやく
「お元気ですか」
空にはただ雲が流れている
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