恋。/倉科 然
 
私の一生は痛みを抱え続けるのだろうか
この心の軋みと共に生きてゆく
そんな覚悟は私には微塵もない
それゆえ私は撃鉄を起こした
決して本物の銃の話ではないが私自身の生命尊厳思想を奪うのには充分な代物だ
私は神仏を殺しまた神仏に殺されるのだ
少しずつ薄らいでゆく意識の中で私は錠剤を口に含みゆっくりと水で流し込む
身体中に根をはった私自身が散り散りになってゆく
私は私を愛した人たちの中で生きてゆくのだ
あなたの中で生きてゆきたいのだ
明け方近くなって冷え切った部屋で私は最期の私を書き記す
ひとに見せられる代物ではなかったがあなたにだけは読んで欲しかった
私からの最期の恋文を
私からの最期の尊厳をかけてここに書き記す
たったの一節だけをあなたに書き記す

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