新月/小林螢太
さくりと欠落し淡いひかりを
切り裂く、闇
まるではじめから
無かったかのようで
わたしの発するパルスは
ほとんどが四散して
もう何処にいったのやら
仕事、という
乾燥した食パンの
すえたバターの匂い
うすぼんやりとした歯触り
きしむ椅子と
NとKが消えかけているキーボード
うすぼんやりと光るディスプレイ
買っておいたカップ麺に
お湯をいれ
あらかじめ作っておいた珈琲を
レンジで温める
夜のオフィスはほの暗く
静寂に満ちている
まるでこの世に
私一人しか
存在していないかのようだ
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