地下、遠恋/ときたまこ
好きな人がすべてだった
彼の言う言葉一つで世界の色が変わった
あたしが今いる暗い部屋も
目を閉じれば桜だって咲き誇るだろうに
それくらい不安定な世界で生きてる
誰かにすがりついて泣いたっておかしいことはないよ
でもあたしはずっと動けない
呼吸と笑い方さえ忘れなければ
人として生きていけるのだと彼は笑った
言葉を変えて、同じことを言っているだけだよ
私が醜いのは君ももう気づいただろう
だからあの日からなにも変わっちゃいない
私の目が輝いたこととか
新宿の夜のうるささとか
一緒に月が見たかったのに
傘の下で笑いあっていたことも
全て愛として、形容してくれたら
そうして生きることも楽になったら、
どれほど。
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