一〇月、食事のあとで/ホロウ・シカエルボク
夜の訪れとともに降り出した雨は秋の始まりにしては不自然なほどに冷たく、まだ夏を待ってでもいるような薄着の私はたちまちのうちに凍えてしまう、友達はそんな私を笑い、私はしかたなく笑い返す、自分の身を抱くようにして震えていると、まるで怖い夢を見た後のようだなと思う、でも、怖い夢なんてここ数年まるで見ていなかった、怖い夢を見るのは憧れてばかりいる人間のすることだ、少なくとも私はそう思っていた、もちろんそれが、私が怖い夢を見ないということの理由になるかどうかはべつの話だ、新しく出来たイタリアンレストランの帰り道だった、パスタが少し柔らか過ぎると感じたけれど、味については申し分なかった、待ちたくなかっ
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