不似合いな黒/ときたまこ
白線からはみ出してはいけないんだと笑った。彼女のその言葉を信じて歩き続けた。
あれから二年経って、私の嫌いな冬が近づく。今年のコートは何にしようかと語る人たちを通り抜けて、私は去年買ったニットを取り出した。
音楽にも洋服にも、当時好きだったものにも、きっと誰かしらのスパイスが混ざっていて、鼻と心をくすぐる。そうだ、私は君が好きだった。
この服を着て知らない東京に行った。狭くて広い東京に。
息が白くなって、甘いチョコの日もとっくに終わって、
今年の桜は誰とどこに見に行けるのかなと考えていた。真っ暗闇の下。
君の大きな手に触れるのが好きだった。いつだって手を合わせて「大きいねえ
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