すみれいろの絵の具/もっぷ
このさびしさはすみれいろをしているから
いまわたしが自画像を描いたなら
なみだのために
すみれいろの絵の具を探すだろう
どしゃぶりのなか街に出て
東京で一番上等な画材屋に迷うことなく
空っぽのお財布を握りしめて駆け込むだろう
けれど傘を持っていないことを理由に
店の入り口の靴を拭うマットを踏む
そこまでで/帰り道
わたしはいくつかの川を渡りついに
最後の一つの橋の真ん中で靴を脱ぎ捨てて
それでもさびしさはすみれいろのままで
永遠を永遠に一人きりで
永遠に完成しない自画像を抱きしめて
戻る 編 削 Point(2)