「千億の夜/祈り」/
 
ゴン

平和も人々の思想の中で留まったまま

飛び出せずにいる

どんなに遠くに逃げてみせても

大きな黒い暗雲があらわれて

一つずつ星たちの光を飲み込んでいく

兵士は冷たいライフルを手に取り

弾が空になるまで暗雲めがけて

死んでいった者達への礼砲を放つ

よろめきながら彼は立ち上がり

悪意の抜けたライフルを杖に

あてもなく歩きはじめる

しばらくして

彼はちょうど魚が息継ぎするように空を眺める

そして息を飲む

月の周りを弧を描いて飛び回る
銀の鱗をもつドラゴン

彼はそれを見て少し笑うと

また歩きはじめる

いつの日か

平和が僕らの作った檻から飛び出し

この空を羽ばたく日が来るのを信じて...

戻る   Point(1)