「千億の夜/祈り」/桂
ゴン
平和も人々の思想の中で留まったまま
飛び出せずにいる
どんなに遠くに逃げてみせても
大きな黒い暗雲があらわれて
一つずつ星たちの光を飲み込んでいく
兵士は冷たいライフルを手に取り
弾が空になるまで暗雲めがけて
死んでいった者達への礼砲を放つ
よろめきながら彼は立ち上がり
悪意の抜けたライフルを杖に
あてもなく歩きはじめる
しばらくして
彼はちょうど魚が息継ぎするように空を眺める
そして息を飲む
月の周りを弧を描いて飛び回る
銀の鱗をもつドラゴン
彼はそれを見て少し笑うと
また歩きはじめる
いつの日か
平和が僕らの作った檻から飛び出し
この空を羽ばたく日が来るのを信じて...
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