「千億の夜/祈り」/桂
「千億の夜/祈り」
豆電球のように丸く鈍く光る月
ライフル銃が墓石のように突き刺さった荒野
足を引きずった兵士が一人 歩を止めて
岩陰に座り込む
一つの弾倉も放たれることのなかったライフル銃が
「臆病者」だと彼を責めたてる
現実から目を背けたくて彼は虚ろな目を
空に向ける
枯れてしまった涙の代わりに
そっと夜空から流れ星がこぼれる
両手を重ねて彼は祈る
人々が千億の夜祈っても叶うことのなかった願い
この祈りが最後であって欲しいと願いながら
彼は大地に跪いて
ただひたすら強く祈る
人々の空想の中で飛び回るドラゴン
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