ディオニソス的日本情緒/小川麻由美
 
小粋な音を響かせる秋風に乗る
音の出所を見極めるため
後ろを振り返った私の目に止まった
見事な日本家屋が朝日に反射する

その音とは日本情緒を
たっぷりと含んだ楽器
三味線の音色と私は睨んだ

その光景を心に浮かべてみる

背筋を伸ばした婦人が
よろけ模様の着物に
キリリと名古屋帯を締める
いなせな女性像

私が想像した女性は一人歩きを始めた

その女性は猫を溺愛していた
愛は歪みを生じる
歪みは留まることを知らない

かわいいね かわいいね
毎日そう猫に話しかけた女性は
猫を手放すことができすにいる

三味線の音は女性の手と猫の皮と絡み合い
悲しくも歪んだ愛情を奏でる

その音色はディオニソスの一角を
私に突き付けてきた
ある種の美しき音色と共に
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