ぼくの内側から崩れていく海/白島真
 

 溢れる海の思想(おもい)を
 透いた生命の鼓動にのせて
 ぼくはきみに語りたい
 灼(あつ)い 熱い視線の息吹に恋い焦がれ
 ひとり 沈んでいった人たちのことを
 ふるえる大気の指先で
 海!と叫んで
 柔い音楽の真綿を
 包むように消えていった人たちのことを

 
 ぼくは崩れていくものたちの
 あの優しさに凍った瞳(め)が好きだ
 究極に迫ろうと
 それゆえ淋しさに縁取られた
 あの声なきこころのシュプレヒコール
 憧憬(あこがれ)に 憧憬ゆえに
 ああ きみは何を失おうとする
 真夏の瞼の面影よ
 そして小さな光に乱舞する
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