渡り鳥伝説 /白島真
それを言うと
渡り鳥のことを思い出す
羽搏いていた鳥が
水面に映った自分の姿を認めると
鳥は堕ちる
波が代わりに羽を動かす
と言うのは便法で錯覚だ
鳥が波に唆(そそのか)されて
浮かぶ赤い実を啄んだから
(とでも言っておこう
「魅力」という言葉を
初めて知ったときのことを覚えている
十歳の放課後だ
だが、「鳥」や「認識」「二元論」「をかしみ」を
いつ知ったかは覚えていない
もちろん
「私」という言葉は今でも知らない
蝶々を知って
何でも蝶々、蝶々と言って
諫められたので
言葉と世界が繋がった
(とでも言って
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