煙/マチネ
花火は好きだ。
大きな音と、大きな光、も好きだけど、派手で空一面を覆う火の玉もすごいけど、おれは手持ち花火を燃やした後の煙が特別好きだ。暗闇の中でもはっきり見えるあのなごりの煙が好きだ。
大好きな人たちと、もう二度と会えない。そんなこと全然ないはずなのに、そんな気持ちになるのは、あの現実味のない煙のせいだと思う。比喩としての煙。その煙を思い出して、追いかけて日々を過ごしている。
本当は夏には終わりなんてなくて、いつまでもなにかで薄めた夏を生きている。いつまでも誰かと別れ続ける気分で。
風のつよいひ、花火をしたことはありますか。風下にたち、弾けた火の粉を浴びる時、もう取り返しがつかないと分かりますよ。すぐそこに明日が待ってるって気づくんです。すぐそこに。
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