静かな滝/白島真
しろい大蛇が
裸体を取り巻いている
その人が男か女かはわからない
顔がすでにないようにも見える
とおくに滝があるが音はきこえない
熱気のようなものが渦巻いている
暗緑色のむらがる蔦を
滝と見まちがえたのかも知れない
たべられて肋骨がむきだしになる
鍛えられた大腰筋 そして
脾臓、胃、横行結腸とはがされ
下肢がぴんと撥ねあがる
そのとき
わたしは熱い棺のなかに横たわっていて
ようやく滝は燃え盛る炎の音
そう気づきはじめた もう熱さは感じない
(註)ギュスターブ・ドレの版画から発想を得ました
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