心の真ん中/Big Ben/桂
心の真ん中/Big Ben
陽の落ちた後のロンドン
ライトアップされたビッグベン
大時計の針の音が
この街の心臓であるかのように脈を打つ
時計台の裏の古びた工具が無数に置かれた部屋に
いつまで経っても成長しない
少年の頃の自分がいる
小窓を開けて外界を見下ろす
9世紀にノルマンディー公が持ち込んだロマネスク建築も
12世紀に生まれた優美なゴシック建築も
19世紀に鉄筋と板ガラスがもたらした近代的なヴィクトリアン建築も
これまでの歴史の軌跡として
なんの違和感もなく仲良く並ぶ
ちょうど人が成長して
その姿を大きく変えたとしても
一人の個人として認められるように
生き抜くために手をたくさん汚してしまったとしても
鏡に映るあの頃の自分が醜い老人の顔に変わったとしても
時計台の裏の部屋で
黄色い鱗粉を落とす
ティンカーベルが通り過ぎるのを
頬杖をついて待つ少年の僕が
この心の中に存在する
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