にょいりんさん/白島真
 
そんな月夜のある晩に、私はいたたまれなくなって外に出たのだった
月はぼんやりと白く輝き、雲がかかっているのがはっきり分かる
「月に叢雲かぁー」 あたりはしんしんとして
電信柱さえ太い生きた樹々のようにぬっくと立っている
どこからか、にょいりんさぁ〜ん、にょいりんさぁ〜んと呼ぶ声が聞こえる
その声は男とも女とも区別がつかず、怖いともやさしいとも思えなかった

    にょいりん?ニョイリン?如意輪?     
 
何だか分からない声は、わたしのうちから出た言葉なんだろうか?

    にょいりんさあ〜ん、にょいりんさぁ〜ん
    にょいりんさ
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