スリープレス/坂本瞳子
るから
ここで
こうして
静かにしているから
もう少し
ほんの少し
朝陽の欠片があの窓の向こうから
差し込んでくるまで
山の向こうが赤らんでくるまで
冷たい夜の空気が少しずつ
熱を帯びてくるまで
ここでこうして
沈黙に抱かれているから
眠らずにいることを
許して欲しい
お願いだから
なんでも言うことを聞くから
眠らないでいさせて
土下座だってするから
おでこを地面に擦り付けるほどに
卑屈になって
謙って
懇願してみせるから
眠らずにいたい
ただそれだけなんだ
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