廻る輪っか/白島真
「わたくし」がいつもうるさい主語だから野花は咲いて名もなく揺れる
気をつけろ死の面さらす詩行から蒼い樹液がぽたぽた垂れて
紫陽花の枯れた姿は傷ましいさっさと首を落として欲しい
かくれんぼの鬼のままみんな路地裏に消えてしまった 夕闇を抱く
缶蹴りの夕闇ふかく呼ぶ声の母の声だけ何故か永遠
この歳でまだ切ないと思う日は病んだ夕陽を滅茶苦茶浴びる
冥界に還りたいとは思わない今あるここが冥界らしく
生誕の時は未来にありましてぐるぐる廻る輪っかが痛い
日めくりの暦がたまるこの部屋で動く地球に揺れて遊べよ
思い出の死角に駅員立ちすくみ丸いパンチ切符の文字散らす
出発の時を告げない電車に乗ってあの日この日のちちははに会う
ひさかたのひかり喉から手を伸ばし明るい夏を咳こんでいる
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