無機質な詩、三篇/山人
 
君の温度がまだ残る部屋、その隅に、残された一つの残片
治癒途中のかさぶたの切れ端が、静かに残されている
物体がおおかた四角なのは、きりりと押し固めることができるようにと、誰かが考えたのか
それとも人の思考が四角く仕切られているのか
その形の中に有無をも言わせぬ、決別がある
部屋には饐えた匂いと、かすかな哀愁のある残照が目立った
君は、その古い真鍮のドアノブを静かにどちらか一方に回し、息を吐く
そして新たなる息を吸い込みながらそのドアを閉めていく
遠望は利く
そこに広がる景色は君が作った世界、そしてそこに何物にも変え難い君の言葉が飛翔していく
滑り止めのある錆びた鉄階段を下る

[次のページ]
戻る   Point(3)