対話/梓ゆい
父のことを思い出すと
少しずつ少しずつ悲しくなる。
閉じたままの瞳/黙って外した酸素マスク
沢山話しかけても・きつく手を握っても
返事を一つも返さなくなったから。
父のことを思い出すと
少しずつ少しずつ腹が減る。
一緒に食べたすき焼きの
和牛もも肉の柔らかさを思い出すから。
父のことを思い出すと
少しずつ少しずつ楽しくなる。
手を?いで歩いた日没前の遊歩道
長く伸びた影で
怪獣ごっこをしていたから。
父のことを思い出すと
父のことを思い出すと
私の横で名前を呼ぶ
在りし日の父の姿が見えてくる。
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