秋の花火/湿気る前に/桂
秋の花火/湿気る前に
秋の花火/湿気る前に
引き出しに入っていた
夏に使い切れなかった花火
力を持て余してるのに
発散する場所を知らない若者のように
袋の隅で数本たむろって
こっちを睨んでる
「どうせ おまえらも湿気てるだろ?」
そう嘲笑ってライターと花火の袋を持って近所の公園に出かける
少し冷たい風が
体の芯残っていた夏の熱を冷まし
コオロギ達が満月に
何重奏も音を重ね歌う
暗闇にライターの火が一つ灯り
頼りない線香花火の先端から
煙が上がる
季節外れでも戸惑うことなく
黄色い火花をパチパチ飛ばして
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