そうしてこれはまるで降り積もらない火山灰のように/ホロウ・シカエルボク
ある施設に着いた
そこの二階部分の
広く設けられたベランダにある
清潔な白いシーツのベッドに寝転んで
側に来たものにこう話していた
「この坂をベッドで下って
実家に着く
そうすればそのまま眠れる」
シンプルだけど
的外れだった
残念ながら俺は
ベッドが坂道を滑り降りるところを
見ることは出来なかった
ベッドに寝転んだ時点で目が覚めたからだ
でも
根拠はないが
あのベッドはきっと
坂道を下ることはなかっただろう
なぜなら
俺は喋り倒して
いっこうに滑ろうとしていなかったからだ
(だいたい、どんな風に滑り出せばいいのだ?)
ただ俺はあの空の色を
あの殺風景な
木々もろくにないような山肌を
おそらくは現実的に理解していて
それを夢の中でそんな風に描いている
俺が見ている景色は
ずいぶん前から
ずっと
そういうものだった
そう
こんな
むせかえる雨の夜の中に居たって
戻る 編 削 Point(0)