峠の山道/山人
峰と峰とのつなぎ目に鞍部があり、南北の分水嶺となっている
古い大葉菩提樹の木がさわさわと風を漂わせる
峠には旅人が茶化して作った神木と、一合入れの酒の殻が置いてある
岩窟があり、苔や羊歯が入り口に生い茂っている
そこは湯飲み岩窟と呼ばれていた
旅人がそこでありあわせの石でかまどを作り、火をたき、近くの清水で湯を作った
嗜好品としての茶ではなく、白湯を飲む
しげしげと旅人がかまどを作り、一杯の白湯のために火をおこし、それを飲む
硬く純粋な清水のとげがこそげ落ち、におい立つ水の甘さがふくれあがる
湯飲みに注がれた、湯気の噴いた白湯をいただく
ふうふうと息を吹きかけ、口中でころがして
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